2018年10月02日

九州・山口 口腔ケアシンポジウム in別府


九州・山口 口腔ケアシンポジウムin別府
シンポジウム「在宅医療の最前線〜在宅がん医療を多職種で考える〜」のシンポジストとして発表する機会をいただきました。

「質的研究による口腔がん患者へ心理社会的ニーズの明確化 〜口腔機能障害による生活支援の課題〜」

(抄録)
2012年のがん対策基本法の改正により、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」が目標に追加され、治療から生活、社会へと施策の対象範囲が広がった。しかし、口腔がん患者の生活支援や心理社会的支援に関する研究が多いとはいい難い。
 我々が行った質的研究では、口腔がんは一般的ながんと同様の問題点とともに特有の問題が生じていた。特有の問題として、摂食嚥下機能低下により日常生活に制限が生じたり、友人との食事を避けるなど社会的関係が減少している人もいた。構音機能障害では聞き返される経験が精神的苦痛となったり、社会的関係に影響していた。また、口腔がん患者は他のがんよりも離職率が高いという報告もある。しかし、仕事を継続している人にとって、がんのことを忘れる時間となっていた。
歯科専門職と福祉職の連携し、口腔がん患者への生活支援体制を構築することが急務だと考える。

スライドの一部抜粋


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口腔・咽頭がんは全がんの2%
他のがんと同じ問題以外にも、口腔機能障害により口腔がん特有の問題があります。

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口腔・咽頭がんの10年相対生存率は53.6%。
口腔がんの後遺症とともに「生きる」ことを支援する必要があります。

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口腔がんの方への質的研究(現在論文を投稿中)
話すこと、食べることの障害により社会関係が減少していました。

StageV、Wの口腔がんの人の53%が離職しています。
がんの就労支援は、MSWにとって大切な仕事の1つです。

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2018年03月29日

テトラサイクリン変色歯の審美歯科治療が患者の人生に与える影響

歯科審美学会に論文が掲載されました。この研究は変色歯と審美歯科治療がその人の性格や人生にどのような影響を与えたかを明らかにすることが目的でした。

 私と 福島正義教授(新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野)のコンセプトは、歯科専門職は口の中だけではなく、「その人の人生も考えて治療やケアをしなければいけない」ということです。審美歯科治療終了後7 年〜29年経過した方にお話をお伺いすることができました。これだけ治療後の経過が長い人に、小学生時代からの変色歯に関係する「人生」を語って頂くのは、福島教授とご一緒でなければできない研究です。


*審美歯科治療とは

「歯科審美学とは、顎口腔系における形態美・色彩美・機能美の調和を図り、人々の幸福に貢献する歯科医療のための教育および学習に関する学問体系である」と日本歯科審美学会教授要綱に定められています。歯を白くするだけではなく、機能改善のための歯列矯正やインプラントなども含まれています。また、「歯科審美と心」について教授要綱に記載されています。

*テトラサイクリン変色とは

永久歯が形成されている時期に大量のテトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、萌出した永久歯が灰色や茶色っぽくなります。

*17年間の問診表531名分の分析より(私たちの先行研究)

 1992年2月から2009年9月までの17年間に、歯の変色を主訴に新潟大学医歯学総合病院歯科の変色歯外来を受診した患者531名の問診票を分析しました。テトラサイクリン変色の患者の86%が、性格形成に重要な小学校低学年から中学校の時期に変色歯が気になり始め、約6割が変色で嫌な経験をしていました1)。永久歯が萌出するのはだいたい6歳〜12歳です。歯の色が黒いことでからかわれたり、指摘されたりしていました。会話の時には、常に口元に視線を感じていました。そのような変色歯に対する他者の反応が患者の行動や心理、性格などに影響していました2)

1)大橋乃梨子, 福島正義: 歯の変色が患者の心理に与える影響−第1報 変色歯外来初診時アンケートの集計, 歯科審美, 23,92-98, 2011.

2)隅田好美, 福島正義: 歯の変色が患者の心理に与える影響―第2報 変色歯外来問診票における自由記述の質的分析, 歯科審美, 27, 14-20, 2014.

*テトラサイクリン変色歯の審美歯科治療が患者の人生に与える影響

【研究目的】本研究の目的は変色歯による心理抑圧プロセス明らかにし、変色歯治療により患者の人生のその後にどのような影響を与えたのかを明らかにすることである。

【研究対象者】新潟大学病院歯科の変色歯外来でテトラサイクリン変色のためにラミネートベニア修復を行った患者である。研究対象者は女性患者8名で、術後7年から27年であった。

【研究方法】質的研究により、「心理抑圧プロセスと審美歯科治療による変化」と「人生に対する治療の位置づけ」について検討した。

【結果】変色歯による心理的抑圧プロセスは、他者との相互作用のなかで生じていた。他者からの指摘に対して口を隠す行動をとるとともに、自尊心が低下することで消極的になり、社会関係にも影響していた。変色歯治療後の大きな変化は手に入らないものが手に入ったことと負担・抑制からの解放であった。

【考察】負担・抑制からの解放により、自然な自分・本当の自分になったと感じていた。これは変色歯治療により自己認識や自尊心が改善したためと推察された。



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              昨年の学会発表時の写真




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2018年03月23日

よくわかる地域包括ケア

初めての編著「よくわかる地域包括ケア」(ミネルヴァ書房)が出版されました。

一昨年の社会福祉学会で執筆依頼があり、恩師の黒田研二先生(関西大学人間健康学部教授)と編集作業を始めました。その後、藤井博志先生(関西学院大学人間福祉学部教授)にも編者に加わっていただきました。


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−この本の特徴(はじめにより)−

1.保健・医療・福祉の多彩な分野の専門職が執筆

保健・医療・福祉の多職種が連携するためには、他の専門職の専門性を理解することが大切です。この本を通して、ご自分とは異なる専門職の視点を理解してほしいと考えています。そして、ご自分の専門分野の支援の幅を広げて下さい。

2.ご自分とは異なる専門職の視点を理解

各テーマについて医療分野の執筆者は福祉を学んでいる人が理解できるように、福祉分野の執筆者は医療を学んでいる人が理解できるようにというコンセプトで執筆しています。

3.やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズの特徴

1つのテーマを2ページまたは4ページで記載し、それぞれのテーマごとに完結した内容になっています。最初から通読するだけではなく、必要なところを読むという利用方法もあります。実践現場で悩んだときには、自分とは異なる専門職の視点で執筆された内容に目を通してみてください。何か考えるヒントが見えてくるかもしれません。


−私自身の思い−

1.医療職・福祉職をめざす学生が、自分がめざす専門分野の専門職の視点を理解できるように。また、他の専門職の視点が理解できるように。

大分大学福祉健康科学部の講義「地域包括ケア概論」(理学療法コース、社会福祉実践コース、心理学コース2年生必修)をイメージして編集しました。

本学部の衣笠一茂学部長を始め、複数の教員が執筆しています。3コースの学生に教えているからこそ、福祉を学んでいる学生に伝えたい医学的知識、医学を学んでいる学生に伝えたい福祉の知識が執筆できたと思います。また、他の執筆者にもそのことに配慮して執筆していただくようにお願いしました。

2.支援のときの他職種の視点

社会福祉をめざす学生への講義では、医学的知識が必要だと感じることが多くありました。また、歯科衛生士をめざす学生には、患者さんや家族の生活を視野に入れた支援ができるようにと社会福祉の考え方を伝えてきました。この本では、それぞれの専門職の視点も学んでもらいたいと考えています。

その経験から本書では認知症、脳卒中、難病、がんの人を支えるために支援について、医師、看護師、歯科専門職、リハビリテーション専門職、社会福祉士、介護職がどのような視点で支援をしているのかを各専門職が執筆を依頼しました。

3.歯科専門職(歯科医師・歯科衛生士)の視点

介護予防や誤嚥性肺炎など口腔機能や口腔ケアの重要性は、多くの専門職で認識されています。しかし、福祉職が手に取る地域包括ケアの本では、ほとんど述べられていません。是非、福祉の視点からも口腔について考えて欲しいと思い、歯科専門職に執筆を依頼しました。





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2018年01月05日

ALS患者の役割認識とQOLの変化



日本難病看護学会誌に論文が掲載されました。

平成22年度科研費研究助成事業によって行った研究 「ALS患者の役割認識の変化―あきらめる役割.残る役割.新しい役割―」の第三弾の論文です。

修士論文のテーマから「ALSとともにその人らしく生きるための支援」についての研究を継続しています。今までの研究から、ALSの発症によるアイデンティティの崩壊と再構築のプロセスと役割認識(家族役割と社会役割)が関連していることが明らかになりました。
下記の3つの研究はそれを深めるための研究です。

第一弾 
  社会福祉学会55(3),41−55,2014
質的研究を通して、ALS発症前後で変化していないことを「連続性」、変化したことを「非連続性」として、役割認識の変化について検討しました。
  
第二弾
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者における家族役割・社会役割の認識」
  日本難病看護学会誌,19(2), 189-199, 2014 
第一弾の研究を基盤として量的研究により、発症前の性格やストレスコーピング特性などの「連続性」と役割認識の関連を検討しました。     
        
 第三弾 
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の役割認識とQOLの変化」
身体状況や療養環境にともなう役割認識の変化とQOLの関連について検討しました。


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確定診断のために入院された患者さんにご協力いただき、継続的にSEIQOL-DWを用いてQOLを測定することで、告知からの時間的な経過や心身状況、生活状態の変化による役割認識の変化と、それにともなうQOLと役割認識の変化について検討しました。また、人工呼吸器を装着して在宅で過ごされている患者さんとの比較を行いました。

SEIQOL-DWを用いてQOLを測定することで、私自身が医療ソーシャルワーカーとして行ってきた支援の評価にもなりました。

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SEIQoL-DW(SEIQoLSchedule for the Evaluation of Individual Quality of Life-Direct weighting procedure)は、半構造化面接法によるQOL評価方法です。

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2017年12月21日

臨床実習における歯科衛生士学生の不安に関する研究

 母校の大阪歯科大学歯科衛生士専門学校の先生方と、11年間続けている研究です。3年間の追跡調査の報告が、日本歯科医学教育学会誌33巻3号に掲載されました。印刷物はなくHPでだけ閲覧できる学会誌です。

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 2006年〜2009年の3年間 、学生へのフォーカスグループインタビューを行い、その結果に基づいて教育改革を進めてきました。しかし,教育改善後の学生への聞き取り調査においても,依然として実習開始直後の不安が語られていいました。
 そこで、2013年〜2015年に、3年生の臨床見学開始前から3年生の臨床実習終了時までの追跡調査を行い、臨床実習の時期による不安の変化や、学生の性格などと不安の関係について検討しました。

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 人生の成長や発達過程において、「不安は重要な鍵概念である」といわれています。しかし、過度な不安により病的な心理状態に陥らないように学生を支援することが重要だと考えています。
 現在は、学生が臨床実習での不安にうまく対処するために、臨床心理士による心理的な支援を実施しています。特に、不安の平均値が高かった3年次の臨床実習開始前から継続的に、大分大学福祉健康科学部の岩野卓先生により、「実習中の不安に負けないプログラム」としてクラス全体への介入を行っています。そして、介入により不安がどのように変化するのか検討しています。


posted by yoshimi at 19:49 | TrackBack(0) | 研究