2018年03月29日

テトラサイクリン変色歯の審美歯科治療が患者の人生に与える影響

歯科審美学会に論文が掲載されました。この研究は変色歯と審美歯科治療がその人の性格や人生にどのような影響を与えたかを明らかにすることが目的でした。

 私と 福島正義教授(新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野)のコンセプトは、歯科専門職は口の中だけではなく、「その人の人生も考えて治療やケアをしなければいけない」ということです。審美歯科治療終了後7 年〜29年経過した方にお話をお伺いすることができました。これだけ治療後の経過が長い人に、小学生時代からの変色歯に関係する「人生」を語って頂くのは、福島教授とご一緒でなければできない研究です。


*審美歯科治療とは

「歯科審美学とは、顎口腔系における形態美・色彩美・機能美の調和を図り、人々の幸福に貢献する歯科医療のための教育および学習に関する学問体系である」と日本歯科審美学会教授要綱に定められています。歯を白くするだけではなく、機能改善のための歯列矯正やインプラントなども含まれています。また、「歯科審美と心」について教授要綱に記載されています。

*テトラサイクリン変色とは

永久歯が形成されている時期に大量のテトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、萌出した永久歯が灰色や茶色っぽくなります。

*17年間の問診表531名分の分析より(私たちの先行研究)

 1992年2月から2009年9月までの17年間に、歯の変色を主訴に新潟大学医歯学総合病院歯科の変色歯外来を受診した患者531名の問診票を分析しました。テトラサイクリン変色の患者の86%が、性格形成に重要な小学校低学年から中学校の時期に変色歯が気になり始め、約6割が変色で嫌な経験をしていました1)。永久歯が萌出するのはだいたい6歳〜12歳です。歯の色が黒いことでからかわれたり、指摘されたりしていました。会話の時には、常に口元に視線を感じていました。そのような変色歯に対する他者の反応が患者の行動や心理、性格などに影響していました2)

1)大橋乃梨子, 福島正義: 歯の変色が患者の心理に与える影響−第1報 変色歯外来初診時アンケートの集計, 歯科審美, 23,92-98, 2011.

2)隅田好美, 福島正義: 歯の変色が患者の心理に与える影響―第2報 変色歯外来問診票における自由記述の質的分析, 歯科審美, 27, 14-20, 2014.

*テトラサイクリン変色歯の審美歯科治療が患者の人生に与える影響

【研究目的】本研究の目的は変色歯による心理抑圧プロセス明らかにし、変色歯治療により患者の人生のその後にどのような影響を与えたのかを明らかにすることである。

【研究対象者】新潟大学病院歯科の変色歯外来でテトラサイクリン変色のためにラミネートベニア修復を行った患者である。研究対象者は女性患者8名で、術後7年から27年であった。

【研究方法】質的研究により、「心理抑圧プロセスと審美歯科治療による変化」と「人生に対する治療の位置づけ」について検討した。

【結果】変色歯による心理的抑圧プロセスは、他者との相互作用のなかで生じていた。他者からの指摘に対して口を隠す行動をとるとともに、自尊心が低下することで消極的になり、社会関係にも影響していた。変色歯治療後の大きな変化は手に入らないものが手に入ったことと負担・抑制からの解放であった。

【考察】負担・抑制からの解放により、自然な自分・本当の自分になったと感じていた。これは変色歯治療により自己認識や自尊心が改善したためと推察された。



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              昨年の学会発表時の写真




posted by yoshimi at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究
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