2017年04月12日

口腔がん患者の心理社会的ニーズとQOL

 医療ソーシャルワーカーとして口腔がんの人をどのような支援する必要があるのかを考えるために、先行研究から口腔がん患者が抱える特有の心理社会問題を整理しました。

1.がん施策の推移
2.病状告知とQOL
3.口腔がん患者のQOL
4.口腔機能障害と社会的問題
5.高齢者口腔がん患者の地域包括ケア

4.口腔機能障害と社会的問題
 外科手術では咀嚼障害,摂食嚥下障害や構音障害などの口腔機能障害や顔貌の変形をきたします。口腔機能障害や顔貌の変形は、日常生活に影響するだけではなく社会関係に影響することもあります。特に構音障害は仕事に影響することも多く、他の部位のがんに比べて口腔がんの人の離職率が高くなっています。

5.高齢者口腔がん患者の地域包括ケア
 口腔がん患者の60歳以上が66.8%を占めています。高齢者の治療の選択には,手術による合併症のリスクや廃用症候群のリスク,快復力の減退など身体的要因以外にも,家族の協力体制や経済状態に考慮する必要があるといわれています。高齢や認知症などのために口腔内や食事の自己管理が困難になることも多く、摂食嚥下機能低下に合わせた調理や,交通が不便な病院への送迎など,日常生活で家族の協力が必要となります。交通等の社会的要因が受診の遅れや術後管理に影響するという報告もあります。また、食べることに制限が加わったことで,一人暮らしの高齢者が社会的孤独となり,自殺の要因の1つとなったケースも報告されています。
 このように高齢者の口腔がん治療では医療的な管理に加え,介護体制を構築することで安定した在宅療養生活を送ることができるような支援が必要となります。

 今回使用した医療的研究論文でも心理社会問題が数多く取り上げられていました。口腔がん特有の問題が日常生活や社会的関係に大きく影響していることから,医療ソーシャルワーカーによる支援が必要となります。今後、歯科専門職を始め医療職ソーシャルワーカーを含めた多職種による連携体制をどのように行うことができるのかを検討していく必要があると思います。

(「口腔がん患者の心理社会的ニーズとQOL」『福祉社会科学』8号より)

口腔がんカラー.bmp


posted by yoshimi at 21:02 | TrackBack(0) | 研究
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